大腸癌発見までの経緯⑥
「薬局に行くから先に帰ってて」
そう告げた夫を残し、病院を後にしました。
クリニックから自宅へは20分程の距離なのに、1時間経っても夫は帰ってきませんでした。
夫は実家に寄っていました。
体調不良のこと、検査のこと、そして、癌にかかっていることを話してきたそうです。
帰宅した夫と、今後のことを話し合いました。
お互いの両親には伝えたので、次は
会社へ病状を報告し、休暇取得の手続きをする。
そして、県病を受診し、入院準備をする。
その夜、布団の中で私は号泣してしまいました。
―なんでまこさんなの?
―なんで“今”なの?
答えのない問いが、波のように押し寄せてきます。
嗚咽が込み上げて、うまく言葉になりません。
夫は、泣きませんでした。
「一人だったら絶望してるかもしれない。
でも今は、おけいはんがいるから、お腹の子がいるから、絶対治さんといけんなぁ、って。」
夫は、すでに前を向いていました。
―なんで“今”なの?
癌が見つかったのが一ヶ月前だったら…
私達は、妊娠を諦めていたかもしれません。
一年前だったら…
夫は、結婚という道を選ばなかったかもしれません。
―だから“今”なんだ。
夫と私がいて、支えてくれる家族や会社の方々がいて、お腹の子がいて…
今が頑張り時なんだ。
とてつもなく身勝手な解釈をして
その日は眠りにつきました。